今年の9/14(土)~23(月祝)に長野市芸術館 展示サロンにて開催予定の、長野市ゆかりの作家たちによる「市内作家によるアート・グループ展2024」。
4回目の開催となる今回は「つながる」をテーマに展示作家を募集し、下記の作家の出展が決定いたしました。
これから制作に入り、エントリー作品を含む複数新作を会期中に展示いたします。
(なお、当初予定していたオーディエンス選出は行いませんでした。)
テーマ 「つながる」
岸田 怜
大鉢「~を求めて」 [陶磁器]
■岸田 怜 Ryo Kishida
1984年長野県出身。長野市在住。島田芳博氏に師事。2009年東日本伝統工芸展初入選(以降入選10回)。2014年日本伝統工芸展初入選(以降入選8回)。2015年菊池ビエンナーレ初入選(以降入選2回)。2019年日本陶芸展賞候補。2020年現代茶陶展TOKI織部奨励賞。2021年笠間陶芸大賞展入選。2023年有田国際陶磁器展(美術部門)日本経済新聞社賞など受賞歴多数。日本工芸会正会員。個展、グループ展など出展多数。彫りと染付を使い制作し、自分をいかに作品の中に表現できるかを常に意識している。
エントリー作品:大鉢「~を求めて」
僕は広い水の中をゆったりと泳ぐ。美しい尾ひれを優雅にゆらして。
その姿は洋々たるもの。
でも僕は孤独だ。この心を満たす何かを探すために泳ぎ続けている。
それはこの姿をほめたたえる声なのか、仲間なのか、将来への希望なのか、夢なのか。
きっと心の中で「これ」というものとつながれる事を願い探し続けているのだと思う。
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北澤聖加
つながる家族(田中家3人娘) [アクリル]
■北澤聖加 Kiyoka Kitazawa
1998年長野市出身。長野市在住。2017年東北芸術工科大学芸術学部美術科洋画コース入学。在学中、山形で学内・学外のアートプロジェクトやグループ展に多数参加。2021年卒業。就職し、現在は平面作品およびインスタレーションにより、自身が日頃考えていることや抱えている問題を作品として昇華する制作を続けている。
エントリー作品:つながる家族(田中家3人娘)
祖父が亡くなった。皮肉にもそこから家族やつながりを意識することが増えた。普段意識していないがそこにあるもの、目には見えないけれどあるもの、家族もその1つ。それは戸籍などとはまた違うと思う。母と叔母は家を出て今は3人とも名字が違うが仲の良い家族。1人っ子の私には羨ましい。
3人が助け合いながら人の死という絶対的なものを何とか皆で乗り越えていかんとする強い姿が印象的だった。3人の姿と、その奥にいるもう1人のあたたかさまで、描いて残しておけたらと思い、制作した。
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小山大誠
渦 [アクリル]
■小山大誠 Taisei Koyama
1998年長野市出身。長野市在住。2023年10月活動開始。
コロナ禍をきっかけに2023年初め頃、独学で制作を始める。
主な活動歴に、2023年10月 個展(popup Gallery T)、2024年3月「アートフェア長野」展示など。
エントリー作品:渦
宇宙や地球上のあらゆるものに渦は存在しています。地球上で多く見られる台風は、悪い面ばかりにとらわれていますが、台風の恩恵としては大量の降水によって水資源を支えるという側面や、強い風で海水をかき混ぜることでサンゴや生態系を維持する役目などがあります。
台風という自然現象が起こることを前にうまくバランスが保たれており全ては繋がっていると感じています。渦はものを生み出す原点であり、恐ろしくもあり美しくもある、とても魅力的なものだと感じています。
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酒井香菜
青い花 [油彩]
■酒井香菜 Kana Sakai
1993年群馬県高崎市出身。長野市在住。専門学校で美術家M氏の授業を受け、絵の道へ進み始める。その頃より、自然界にあるものたちを心の赴くままに色々とスケッチする。
2022年に初個展「星の船」を開催(長野市 Gallery MAZEKOZE)。
2023年より新たな扉を開く為、アトリエの仲間で音楽活動M・O・F(モフ)を開始。
絵画教室のアシスタントをしながら、美術を通して人と関わり、日々制作している。
エントリー作品:青い花
この世界を見つめていくことは、その一部である自分を見つめていくことであり、この世界を美しいと思えることは、その一部である自分を信じられる第一歩であるだろう。そのような、この世界に流れるあらゆる無数のつながりを一つ一つ感じ取っていくことで、また次の世界が見えてくるのではないだろうか。
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宮内由梨
S.Script - Score K. [写真]
■宮内由梨 Yuri Miauchi
長野市出身。京都造形芸術大学卒業。沖縄、ロンドンを経て、現在は横浜を拠点に活動する。身体の感覚、とりわけ皮膚感覚や内臓感覚に焦点を当てる。
主な展覧会に「水と土の芸術祭2015, 2018」(清五郎潟、新潟)、「アーツ・チャレンジ2022」(愛知芸術センター、愛知)、「VOCA展2023」(上野の森美術館、東京)、個展「Scraped Script – はがされた余韻や明ける癒紋」(gallery N 神田社宅、東京)、「第1回BUG Art Award ファイナリスト展」(BUG、東京)など。
エントリー作品:S.Script - Score K.
身体が藻掻く内外の音を記録するにはどうしたらよいだろうかと考えていました。特注のコンタクトマイクを腕や脚に貼り付けて、ライブパフォーマンスをしたり録音してサンプリングしたりするも、どこか腑に落ちません。確かにあるはずの身体の中の音が、聞こえてこない。音を用いずに音を表せないだろうかと、ふと楽譜が思い浮かびました。幼い頃は本を読むより楽譜を眺めていた時間のほうが長く、その記号の連なりを好ましく思っていたものでした。
イベントスコア/図形楽譜の領域では、文字によって行為を指示するスコアや、五線譜に図形や絵を描き加えたものなどさまざまな方法があります。自身が楽譜をつくるならば、やはり掻くという行為によってであり、その行為が既存の線(ライン)を崩していく工程がふさわしかろうと思い、本作をはじめとする楽譜のシリーズが生まれました。
ここで用いられている4本の線、つまり四線譜は11〜13世紀頃にみられるネウマ譜を代表とする、歌の楽譜をもとにしています。ネウマとはギリシャ語で「合図、身振り」という意味があり、器楽よりも歌う声を想起させる古い時代の形式によって、身体の内外の音の響きを見出します。
人にとって背中は身体の大部分を占めていますが、誰も自らの背中を正視することはできません。自分自身でありながらも、そこで何が起きているか知りたければ、他者に、身体の感覚神経に尋ねるしかない。身体の前面に造られている顔や性器を気にかけ愛でるように、他者の背中の軌跡を通して、その人の人生に耳を澄ませ、その人が生きた時代に思いを馳せる作品を実践しています。
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また、第19回池袋モンパルナス回遊美術館「池袋アートギャザリング公募展 IAG AWARDS 2024」における「長野市芸術館特別賞」受賞作家も決定しました!
「市内作家によるアート・グループ展2024」では、下記2名の受賞作家の作品もあわせて展示します。
(「長野市芸術館特別賞」は当初1名の予定でしたが、2名受賞となりました。)
審査員:OZ-尾頭-山口佳祐(画家 絵師 浮世絵師/長野市出身)
審査日:2024年5月30日
川原井康之
《審査員コメント》
川原井康之さんは、大きく分けて2つのモチーフを軸にリトグラフ技法とペン画を用いて表現している作家さんです。抽象的な「流れ」、具体的な「家」。この2つをベースに創る川原井さんの作品からは日本的な余白を感じられる作品が多いと思います。各作品へコンセプトがじっくりと昇華され、繊細な描写と淡い色彩が織りなす独特な世界観がとても素敵だと思い、選出させていただきました。
■川原井康之 Yasuyuki Kawarai
1997年東京都出身。2019年 東京造形大学 卒業。主な技法はリトグラフ、ペン画。
《受賞歴》
2017 第6回FEI PRINT AWARD オーディエンス賞
2023 IAG AWARDS 2023 EXHIBISION 奨励賞
《自己紹介》
私は東京都青梅市で育ち、現在は埼玉県所沢市に住んでいます。
版技法とペン画をそれぞれ用いてファインアートを制作しています。大学在学時にリトグラフ技法を学び、現在は創形美術学校の版画工房などを利用して制作しています。
ペン画は、版画工房が利用できない時に自宅で作っています。
「流れ」をテーマとした作品について
私はどんなものも細かな個の粒子の集合によって形成され、またその集合が個となり…というスパイラル構造をもって「流れ」を構成していると考え、その個が失われる儚さ等をテーマとした版画作品を主につくっています。それは物理的な意味も含み、また時間や空間といった概念的な意味も含みます。例えば、私達は個々人として確かに存在していますが、マクロで見ると時代という流れを構成するものとして、個が排され一緒くたにされます。そうした個が消える儚さ、やるせなさ、あるいは健やかさを、山や川といった本来移ろいにくい自然物を敢えてモチーフに選んで描いています。
「家」をモチーフとした作品について
数年前から、家というものについて考えるようになり、リトグラフなどで制作するようになりました。短い線の筆致で、主に一戸建てを描いています。これはもう一つの「流れ」というテーマの作品とは異なった価値観で描いています。
私が家について考えるようになったきっかけとして、家を購入したことが挙げられます。それまで私は一年ほど現在の妻とアパートで同棲しており、その更に前は実家で暮らしていました。ですので、家というものを所有する、ここに住んでいる家は私とその家族のものだ、という実感は最近できたもので、家を描くようになったのもここ数年のことです。
家を買い、家が有するモノとしての機能について考えることが増えました。その中で、特に外界と内側とを区切る境界としての意味合いが気になりました。家には、社会を断絶し(もし二人以上が家の内側に存在する場合であれば)内部で新しい社会を形成する役割があります。この内なる社会は、塀や扉といった物質の強度に関わらず、私達が境界としての役割を諒解したものによってのみ守られています。つまりそれは紐や枠線といった一見頼りないものでもその機能を果たします。そして、それらによって内と定められたものは外界からは認知し得ない、あるいは認知してはいけないものとして扱われます。
だとすれば、家として認められたモノの内は、暗闇のようなものではないかと私は思うようになりました。しかもそれは、見知らぬ家だけでなく、内部の状態を知っている自分の家についても同じことが言えるような気がします。私が現在住んでいるマンションの一室を私は隅々まで知っている訳ではありません。朝に出掛けて夜に帰ってみると、全然家の様子が違うと感じることもあります。それは単なる家具の配置の違和感に過ぎなかったりするのですが、簡単に家が変容しうるという意味も含まれているようで、不可思議のような、不気味なようにも思えます。
こうしたところが気になり、私は家を描いています。一戸建ての古民家ばかり描いていますが、それは古民家には物語性を感じられて好ましいためです。
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ヒョーゴコーイチ
《審査員コメント》
ヒョーゴコーイチさんは、炭化彫刻という無塗装の炭の美しさを追求しながら制作している作家さんです。ヒョーゴさんの作品は、全体を俯瞰して見ることで感じる造形的な美しさが特徴だと思います。人工的な規則性ではなく有機的な曲線と素材が持つ力強さによって、ある種の規則性と自然へ回帰するようなミニマルな空気感が素敵だと感じ、選出させていただきました。
■ヒョーゴコーイチ Kooichi Hyooogo
新潟県出身。2019年から作家活動を始める。主な技法は炭化彫刻。
《受賞歴》
2019 MIMARU TOURISM COMPETITION 2019 優秀賞
2020 MONSTER Exhibition 2020 最優秀賞
Independent Tokyo 2020 審査員特別賞
2021 第56回 神奈川県美術展 入選
Independent Tokyo 2021 審査員特別賞
2022 第57回 神奈川県美術展 入選
2023 いい芽ふくら芽 in NAGOYA RS 2023 グランプリ
《自己紹介》
私の作品創作は炭焼きからはじまります。樹々を炭窯でじっくりと焼きあげた後に素材と向き合い寄り添いながら造形をします。その後、磨きあげることで現れる炭ならではの輝きを纏った作品が生まれます。光に照らされることで現れる様々な表情や気配、うごめくエネルギーなどをお楽しみください。
無塗装の炭の美で人と自然との共存や循環、再生をテーマに炭化技法が国際的なひとつの芸術表現として広まるよう創作活動をしています。
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以上7名の作家の作品が集まるアート・グループ展、9月の開催をぜひお楽しみに!
■「市内作家によるアート・グループ展 2024」
会期:9月14日(土)~9月23日(月祝)※9月17日(火)のみ休館
長野市芸術館展示サロン(1F)
入場無料