Performances & Events水曜ひるまのクラシック・リサイタルシリーズ vol.59 新居由佳梨 ピアノ・リサイタル

公演レポート

今年度の「水曜ひるまのクラシック・リサイタルシリーズ」も残りわずか、11月は新居由佳梨さんのピアノ・リサイタルです。
白地に花柄のドレスで登場した新居さん。衣装の雰囲気も相まってやわらかな雰囲気でピアノに向かい、J.S.バッハ（A.ジロティ 編曲）《G線上のアリア》からスタート。曲間にはプログラムの解説や聴きどころを語りながら進んでいきます。

今回の「長野をイメージした曲」は、ヴィヴァルディ（オステルベルグ 編曲）《四季》Op.8より第4曲『冬』から 第１楽章。冬に長野を訪れる機会があったため、厳しい寒さのイメージから選曲されたとのこと。凍えるような冷たい空気を感じる演奏に、会場中が聴き入ります。

今回のリサイタルは「オーケストラの曲をピアノソロで」をテーマに、1台のピアノからオーケストラの名曲の数々が奏でられるプログラムです。マスカーニ（新居由佳梨 編曲）《カバレリア・ルスティカーナ》より「間奏曲」、そしてチャイコフスキー『くるみ割り人形』Op.71より「行進曲」「金平糖の踊り」「間奏曲」「トレパック」（プレトニョフ 編曲）など、誰もが一度は聴いたことのあるキャッチーな旋律が華やかに響きます。

そんな『くるみ割り人形』にちなんで、トークコーナーでは本物のくるみ割り人形を持って登場。ヨーロッパの雑貨屋さんで購入したという、新居さんの私物だそうです！

3歳で音楽教室に通い始めたきっかけや、小学生の頃に見たエフゲニー・キーシンの演奏、大好きなスポーツの話題などなど、たっぷり伺いました。
ピアノという楽器については、「（管楽器のように）息で音を出す楽器ではないけれど、演奏者の呼吸はとても重要なので、演奏前は呼吸を整えることを大事にしている」とのことでした。また、スタインウェイ・アーティストとして、スタインウェイの特徴について「鍵盤を押した時のタッチ感などちょうどよく、自分が思った通りの演奏ができる。パワフルでもあり、繊細でもある楽器だと思います」というお話もたくさんお聴きできました。

後半は、ホルスト（ルービンシュタイン 編曲）の組曲『惑星』Op.32より「木星」、そしてマーラー（O.ジンガー／新居由佳梨 編曲）の交響曲第５番 嬰ハ短調より第４楽章「アダージェット」と、オーケストラの迫力や厚みをピアノソロで繰り広げる壮大な曲が続きます。
本編最後はガーシュウィン《ラプソディ・イン・ブルー》。「ピアノ協奏曲を、オケもピアノもこの1台で表現する」との言葉どおり、ゴージャスな深みのある圧巻の演奏！

熱気に包まれた会場の拍手に応えてのアンコールは、シューベルトのピアノ曲を。本編とは違った響きで、心地よく幕を閉じました。
聴きごたえのあるプログラムで、ピアノ1台での表現の幅を存分に感じていただけたのではないでしょうか？

ご来場ありがとうございました。

＜本日のアンコール＞
シューベルト：即興曲集 D899より 第3番

＜アンケートより＞
♪オーケストラ曲をピアノで弾くっていうのがとてもよかったです。ピアノってこんなに素晴らしい楽器なんだと改めて思いました。
♪オーケストラの演奏をピアノ1台で再現！本当に素晴らしいです。私は特に『冬』が好きなので演奏が聴けて嬉しかったです。ラプソディ・イン・ブルー圧巻でした！
♪ヴィヴァルディの《四季》の『冬』、ピアノで聴くのも素敵ですね。後半の3曲、本当に心打ちました。こんなにいろんな事できるのですね。
♪長野といえばこの曲！の選曲が今までになく今日の長野にぴったりの選曲で、演奏を聴きながら外の寒さを思い出して身震いしました。
♪くるみ割り人形の演奏は本当にピアノ1台？というくらいオーケストラみたいに迫力がありました。びっくりしました。聴いたことのある曲がこういう風になるのかと楽しく聴きました。アンコールまで、フルコースいただいた気分です。