Knot & No.2
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エンタメレポートエンタメレポート2Entertainment Reports     023年10月以来、1年半振りに読売日本交響楽団が長野市芸術館でその楽音を響かせました。指揮者は、長野市芸術館にはリサイタルを含めて3回目の登場となる鈴木優人さん、ソリストにギタリストの村治佳織さんを迎えました。村治さんは2019年4月の「水クラ」以来2回目の出演。開演前に「長野の乾いた空気がアランフェスと重なり、ここで演奏できることを楽しみにしている」とコメントもいただきました。まずはモーツァルトの歌劇『イドメネオ』序曲。オーケストラはヴァイオリンが向かい合う対向配置。注目は後方にずらりと並ぶコントラバス。これは指揮の鈴木さんのアイデアによるもので、反響板の効果とメインホールの響きを最大限に生かすための大胆な采配。どっしりとした低音が心地よく響く、荘厳な幕開けとなりました。そして、ロドリーゴ《アランフェス協奏曲》で村治佳織さんが登場。大柄な模様の、目にも鮮やかなロングドレスが華やかに揺れる装い。息を合わせ、ギターが静かに歌い始めます。村治さんの指は軽やかに踊り、奏でる姿も凛とした美しさ。ギターの繊細な響きとオーケストラとのハーモニーが混ざり合いながらその世界を創ります。イングリッシュホルンとギターの幻想的な掛け合いが光る、誰もが一度は耳にしたことのある第2楽章の哀愁に満ちた旋律は、注目の一幕。その繊細でただただ美しいギターの音色と、読響の精巧で品格のあるサウンドが見事にロドリーゴの世界を描ききり、会場はまるでクライマックスかのような大きな拍手に包まれました。そして、村治さんソリスト・アンコールはご自身の作品《バガモヨ》を。後半はベートーヴェン交響曲第3番『英雄』。鈴木さんの指揮、コンサートマスター林悠介さん率いる読売日本交響楽団の妥協のない姿勢がサウンドに現れます。格調高い、艶やかで輝く音色がダイナミックでありながら繊細なタクトから引き出されていくのが目に見えるよう。ドラマチックで重厚感のある極上の『英雄』をたっぷりと堪能していただけたのではないでしょうか。2025年4月29日(火・祝) at 長野市芸術館メインホール11鈴木優人×村治佳織×読売日本交響楽団

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