Performances & Events水曜ひるまのクラシック・リサイタルシリーズvol.35　荒 絵理子 オーボエ・リサイタル

公演レポート

今日の「水クラ」は、オーボエの荒絵理子さんが登場です。ピアノは沼沢淑音さん。
オーボエといえば難しい楽器という話をご存知の方、実際にオーボエを演奏されている方もいらっしゃるかと思います。

荒さんによれば「ギネスブックに一番難しい楽器として掲載されるほど、まず音を出すだけでも難しい」ということ。そんな楽器で音色も表情も豊かに、様々な曲を聴かせてくれました。

プログラムの前半は、荒さんの1枚目のCDに収められた作品を中心に。オペラのような華やぎの感じられるドニゼッティのソナタに始まり、無伴奏で映画「もののけ姫」のテーマ曲の1つ《アシタカせっ記》、北欧デンマークの作曲家ニールセンの《2つの幻想小曲集》と続きます。
いずれもオーボエの表情豊かな音色とあふれる歌心が魅力的です。管楽器ならではの風の響きが、澄んだ音にも、力強い音にも、人の気配を感じさせます。

前半の最後を飾るのは、《こうもり変装曲》。『こうもり』はJ.シュトラウスⅡ世によるオペレッタで、ウィーン貴族の優雅さとユーモアにあふれた作品ですが、その名場面集ともいうような作品です。「変奏」ではなく、「変装」。荒さんと沼沢さん、この変装の名人たちは、手元の楽器一つでオーケストラを演じ、登場人物を演じます。くるくると表情を変え、華やかな場面を描いてみせる鮮やかな手つきが、聴くものを幻惑します。

後半は、フランスの作曲家ヴェルーの《演奏会用独奏曲の第３番》、モーツァルトの名曲《アヴェ・ヴェルム・コルプス》のオーボエ、ピアノ版、そしてラヴェル《クープランの墓》。

この曲はあまりに難しいため、オーボエ奏者の間では「オーボエの墓」と冗談交じりに言われることもあるとか。古風な舞曲のリズムに乗って流れる旋律は、難しさなど感じさせない、流麗で幻想的な響きです。

澄んでまっすぐに届く音色、あわせる楽器によって音色が変わる表情の豊かさ、オーケストラの演奏の中でも「ここぞといういいところでソロが来る」のもオーボエの魅力だと語る荒さん。

この楽器の魅力を広く知ってほしいと、学校訪問などの活動にも力を入れているとか。今日の公演で、オーボエの魅力、そして、その音からも感じられる人柄の魅力をしっかり届けていただきました。

ご来場ありがとうございました。

＜本日のアンコール曲＞
川の流れのように
星に願いを

＜アンケートより＞
♪オーボエ1本であんなにバラエティ豊かな音色を出せるなんて驚きました。ピアノとの息もぴったりでした。
♪《アシタカせっ記》には郷愁を感じました。
♪思っていたより音の広がりが素晴らしく心地よい響きでした。ラヴェルの曲に、小さいころ暗くなるまで遊んでいて夕闇迫る中を急いで帰ったことを思い出しました。
♪曲を聴きながら頭に浮かんでくるのは「人」でした。楽しく舞ったり、歌ったり、散歩したり、風景が浮かんでもいつも人がいるように感じられました。秋にはオーボエがぴったりですね。
♪オーボエは心にしみる音ですね。歌のような演奏で良かったです。ピアノも輝いた音でした。
♪つややかでまっすぐ届くオーボエの音色、何と魅力的なんでしょう。ギネス級に難しい楽器ならではのご苦労話、とても興味深かったです。
♪荒さんの人柄もよかったです。沼沢さんのピアノも素敵でした。
♪肺活量がすごい！！クラクラしませんか？
♪踊りだしたくなるようなリズミカルな曲だったり、小気味よい演奏でとても楽しかったです。トークタイムには貴重なお話を沢山ありがとうございました。
♪あらためてオーボエっていいなあと思いました。木々が色とりどりに色づく今の季節にぴったりの音色だと感じます。
♪《アヴェ・ヴェルム・コルプス》《川の流れのように》は出だしが人の声のように聞こえました。